Martin Baltimore Mk.I (A-30)




<実機について>

 RAFの発注により米国Martin社で開発された軽爆撃機。フランスの降伏で宙に浮いたMartin 167F(イギリスではMaryland)をイギリスが引きとって使って見たら、意外と気に入ったので強化型を発注してみたのがバルチモアという解説も結構見かけますが、どうもよく調べて見ると1940年5月に英仏の共同プロジェクト(Anglo-French Purchasing Commissionとありますから、そういうことなのでしょう。)として発注された機体のようです。

 主翼こそMarylandと同じものを用いていますが、胴体、後部安定板を改設計し、発動機を強化した関係でナセル周りも全面的に更新されています。胴体はメリーランド同様の後部で縊れた形状を踏襲していますが、全体に拡大され、前後コックピットの往来が可能になっているとのこと。

 初期のMk.Iは後部の開放銃座にVickers class K旋回銃1丁を装備していましたが、程なくこれを連装にしたMk.IIが登場し、Mk.III型以降では動力銃塔を装備するようになります。ボルチモアはメリーランドと交代する形で、主として北アフリカ戦線で本来の軽爆撃機として使われた他、長距離偵察などにも使用されたとの事。合衆国陸軍航空隊でもA-30として採用されて故郷に微妙に錦を飾った他、本国以外ではトルコ空軍がMk.Vを使用しています。


Martin Baltimore Mk.I
寸法諸元18.69×14.80×5.41m(W×L×H) 最大離陸重量10,251kg
主機Wright R-2600 (1,600HP)×2 最大速度488km/h(3,500m)
初飛行1941.06.14 航続距離1,700km
武装Browning .303機銃×6、Vickers class K旋回銃×1、爆装2,000lb


<キットについて>

 Azur社から2002年に発売になった簡易インジェクションキットを使用。Mk.IとMK.IIのコンパチですが、胴体の後部銃座周りが別パーツになっていて後期の動力銃塔装備型への発展が可能になっています。つか、どうも機銃、銃塔のクリアパーツなど

既に全バリエーション分が入っている

のではないかと思われます。ま、いいんですが。尚、MK.III以降はどういったわけかSpecial Hobbyブランドで発売になっているようです。Web上や雑誌等でみた限りではデカール以外は全く同じもののよう。

 このキットは前作のメリーランドで問題だった滑油冷却機のインテイクが塞がっている、胴体側面の窓が塞がっている、エンジンがちゃっちいなどの問題をきっちり改善してきており、好感が持てます。しかし、同じくメリーランドで問題だった着陸灯がクリアになっていない、翼内装備の機銃が全く無視されているといった点はそのままです。着陸灯はモールドが入っているし塗装図でも明記されているので、アクリルで埋めるなり塗装で表現するなりすれば良いのですが、機銃についてはキットのモールド、インストの記述とも全く頬っ被りをしている状態で、他の資料を当たらないと存在すら判りません。この辺りはちょっとどうかと思います。

 使用されたエリアとしては北アフリカが主なので、カラーバリエーションは全てRAFの砂漠迷彩ですが、主翼ラウンデルの赤青の面積比が異なる2種類のデカールが入っているなど拘りも見せてます。発色も良好な様子。ただダークアース、ダークグリーン迷彩も一例くらい欲しかったかも。


<製 作>

 簡易インジェクションにしては出来のよいキットで仮組みした分にはちゃっちゃと組めそうな気がするのですが、

そうは烏賊の○玉

各パーツの縁に必ず“まくれ”が出来ていたり、板状のパーツの端面が必ず斜めになっていたりとランナーから切り離したパーツの処理にまず思いのほか時間を食います。それともハズレを引いたか?

 主翼、水平尾翼は上下貼り合わせになっていますが、後縁が結構厚ぼったいので裏側からかなり削り込んでやります。垂直に切り立ってるわけではないので、調子に乗ってやりすぎると後縁の形自体が変わってしまうのでこれも要注意。主翼着陸灯はアクリルで透明化。プラが柔らかいので切り出しは物凄く楽です。前縁の銃口はmayonaka@SAMさんより頂いた資料をもとに開口し、翼下面の薬莢排出口は塗装で誤魔化すことにしました。

 簡易インジェクションの中翼機の常で、主翼、水平尾翼は胴体にイモ付けになっています。このためこれらの翼は胴体左右を接着する前に取り付け、胴体内側から翼部まで通る孔を開けて真鍮線を差込み、補強しています。左右胴体を貼り合わせる時に重さで手元が狂いやすいとか、上半角を揃えにくいとかの問題はあるんですが。上半角については、主翼を考えなしにそのまま取り付けると水平ないしは下半角気味になってしまうので、ゼリー状の瞬間接着剤で強引に斜めに付けた後、接合部下面の隙間にパテを詰め込んでいます。付ける前によくすり合わせておくことをお奨めします。

簡易インジェクションのキットはコックピットはレジンの精密なものが付いてくるケースが多いですが、Azurのキットは概ね普通のインジェクション並です。キャノピーもインジェクションなのであまり中は見えないだろうと思い、操縦席、機首偵察席(←多分)はシートベルトの追加と計器盤をデカールで再現するのみに留め、素通しになる後部銃座については側壁にプラ板で桁を組み予備弾倉を貼り付け、床板にはファインモールド社謹製の滑り止め鋼板を奢るなど、ちょっと気合を入れて見ました。しかし、いざ出来上がって見るとキャノピーの透明度が高いために(←いや、それ自体は素晴らしいことなんですが)操縦席等は丸見えな替わりに、後部銃座は開口部が狭くてろくに中が見えません。ままならないものです。

 プロペラはキットのままでは回転できないので、エンジン側に1.6mmの孔をあけボス側に1.5mmの真鍮線を通します。接着用のはめ込みがあるので、OD1.8mm/ID1.6mmの真鍮パイプを治具に使うと真中に開口するのが容易です。


<塗 粧>

 下記の事情で時間が限られていたこともあり、CGIクレオスの「WWII英空軍迷彩色セット」の特色を使い、ちゃっちゃと仕上げました。マーキングもすべてデカールに頼っています。とにかく風防のマスキングが大変。極東の某国の重爆・陸攻群に比べればまだ楽なんでしょうが、あちらはマスキング材も豊富だしなぁ。

 尚、本機は2002年12月に行なわれた「イギリス及び連邦国機コンテスト2002」にも参加しております。




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