Dornier Do17M ルーマニア王国空軍

1/72 RS models




<実機について>

 早々にBMW VIを見限ったHe111なんかと違い、非力なBMW VIエンジンで頑張ってきたDo17。しかしまぁやっぱりスペインではラタにえらい目にあわされたのと、もうちょっと搭載量も欲しくなったのとで御多分にもれずパワーアップに走ることになります。1937年のチューリッヒのエアショーではDB600装備のM-0が颯爽とデビューし、戦闘機(といっても居合わせたD.510なんかですが)よりも速い爆撃機っぷりを披露してのけます。といってもやっぱりそこは微妙に日陰者。いざ生産となると肝心のDB600はメッサーシュミット先生に囲いこまれ、爆撃機用の新型Jumo211もHe111とJu88に回されて、主力機にはあんまり使われていない空冷単列9気筒のBramo 323AとかBMW 132が回ってくるのでした。

 結局、爆撃型の量産型はBramo 323A装備のM-1となり、それでも最大速度は426km/hとE/F型から50km/h以上の増速を果たします。一方偵察用のP型には燃費に勝るBMW 132が使用されています。が、最大速度500km/hを越える戦闘機があちこちで開発されている当時の状況では半端な速度だけでは如何ともし難いのが悲しい現実。結局は爆弾搭載量を減らしてまで武装を増やしたZ型が生産されることになり、M型の生産は約200機に留まります。

 M/P型はスペイン内戦の後期に投入されたほか、ポーランド戦役でも活躍しています。しかし西方電撃戦のころになると元の数が少ないこともあって、殆どZ型に置き換えられている感じ。尤も戦闘序列なんかを見てもZとMがちゃんと区別されていないケースが多く、特にM-1とZ-1はエンジンや武装も共通なのでそれなりに混用されていたのかも知れません。偵察用のP型は結構使われていますが、やはり速度の遅さは隠せず、この時期のフランス空軍のあまり多くは無い戦果の中で、単独行動中のDo17Pを撃墜しているケースは割りと散見されます。BoBともなると流石にM型が出てくる記録はあまり見られないのですが、それでも前哨戦となる7月の戦闘でDo17Mが200発の銃弾を受けながらも生還し、しかも攻撃をかけてきた

ピーター・タウンゼントのハリケーンを返り討ち

なんて勇ましい記録もあったりします。

 ルーマニア空軍には長距離偵察隊のブレニムが消耗した穴埋めとして1942年5月に10機が供与されています。本来爆撃型のM型ですが、写真を見る限り機首下面に突き出ている爆撃照準器はなくなっているようであり、最初から偵察専用に用いる予定だったのでしょう。実際全機が第1長距離偵察航空群の第2長距離偵察戦隊に配属され、42年夏期攻勢やスターリングラード戦役にも参加しています。ブレニムIと大差ない性能ながらARRは結構Do17Mの性能に満足していたようで、実際42年の損失も(まぁ母数も少ないとは言え)僅か1機に留まっています。しかし、翌43年になるとより高性能なJu88D-1の供与が開始されたために第2偵察戦隊もそちらに機種更新。Do17Mがどうなったのかは何気に記述がないのですが、後方での訓練任務にでも使われたのでしょう。44年には3機のP型も入手しており、こちらは飛行学校で使われたとの記録があります。

Dornier Do17M
寸法諸元18.00×15.80×4.55m(W×L×H) 全備重量8,590kg
主機Bramo 323A “Farnir” (公称1,000HP) 最大速度427km/h
初飛行1936.04.25 最大航続距離1,160km
武装MG15(7.92mm)機銃×3、爆装1,000kg


<キットについて>

 RS modelsのDo17は2007年に発売になったキットで、デカール替えで結構多くのバリエーションが出ているものの、2008年に発売されたK型を除いて、基本的には全て頭部が小さく空冷エンジンのM/P型です。老舗AirfixからE/F型が出ており、ICMがZ型やDo215Bをアナウンスしていてバリエーション展開も塞がれている中で、こんな人気のなさげなタイプを出して大丈夫なのかと思いましたが、いざ国内に入荷してみると約5,500円程度という結構なお値段。つまりは

下手なバリエーション展開に頼らず、単価を上げて金型代を速やかに回収

という企業としてはまぁ健全と言えば健全な、でもモデラーの財布にはちょっと苦しい思想でやっているんではないかと思います。まぁ潰れるよりは何ぼかマシではあるんですが…。

 キットは基本的にM/Pのコンパチで、透明部品は良質なインジェクション。シートベルト等の小物がエッチングでついてくる他、コックピットやオイルクーラー周りのパーツの一部がレジン製になっています。レジンパーツがレジンにする意味がわからないくらいディティールがだるいのが突っ込みどころでしょうか…。


<製 作>

 とにかく所詮は簡易インジェクションなので、例によって翼後縁の削り込みや、垂直の出ていないパーツ端面の処理などは必須。それなりに手の掛かるキットではありますが、そういうところさえしっかりやっておけばちゃんとDo17の形になります。ただ、主翼と胴体の接合は結構難しく、フィレットがうまく連続し、かつ背中のラインも面一になるようにするには接合面を少しずつ削りながら慎重に位置合わせをしてやる必要があります。

 あと、インストがいい加減なのも困り者。折角非常に出来の良いエッチングのシートベルトが入っているのにインストには全く記述がなかったり、エンジンナセルのパーツ番号が左右逆になったりしています。描かれている部品の形も実物と微妙に違っていたりすることもしばしば…。

 戦中にルーマニア入りしているため、塗装はルフトヴァッフェの通常の上面RLM70/71、下面RLM65のスプリッタ迷彩塗装。特に何も考えずにクレオスの指定色を使っています。スプリッタ迷彩の塗り分けは例によって型紙を使用。デカールもキット付属のものが良質なのでそのまま使っています。

 尚、本作品は2008静岡ホビーショー合同展示において、オービーズブースにて展示させて頂きました。


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