愛知 E16A1 水上偵察機 瑞雲11型




<実機について>

 旧海軍の開発コードで一番大きな番号までいったのは水上偵察機を表す“E”のカテゴリですが、その最後を飾るE16が本機です。なまじ急降下爆撃能力を付加したりしているために「水上爆撃機」などとカテゴライズされて、強風同様の水上機に過大な期待を寄せた

日本海軍お約束の勘違い兵器

たとして扱われることも多い機体ですが、この開発コードから見ても、双フロートの穏当な設計から見ても、基本的には川西94式、愛知零式と続いてきた海軍三座水偵の後継機と考えるべきでしょう。(複座ですが。)戦闘機とも見まごう気合の入った機体設計や、主翼の20mm銃はまぁご愛嬌ということで。

 末期の水上機の例に漏れず、敵制空権下では活躍の場も無く、航空戦艦に改装された伊勢、日向の搭載機として比島戦役に投入する計画も早々に頓挫しており、その後夜間攻撃などに細々と使われた程度で活躍の場も殆ど無かったというのが定説ですが、味方制空権下の沿岸哨戒や艦載機として艦隊の前路哨戒などには有効な機体であったと思われますし、

味方制空権下の沿岸も、前路哨戒すべき艦隊もごっそり消滅していた

んではそりゃあ用途もなくなるわなぁとは思います。

 バリエーションは11型のみですが、試作型の十六試水上偵察機ではフロート支柱両側の急降下制動版の孔が無く、また、制式採用後も孔の空き方に小変更が加えられています。


愛知 E16A1 水上偵察機 瑞雲11型
寸法諸元14.00×11.59×4.95m(W×L×H) 全備重量3,800kg
主機三菱 金星54型 (1,300HP) 最大速度448km/h
初飛行1942.5.22 最大航続距離2,535km
武装99式二号20mm機関砲×2、二式13mm旋回機銃×1


<キットについて>

 1998年に

何をリリースしてくるのか予測もつかないことで知られる

フジミ模型から新金型のキットが発売され、全国10万人(推定)の瑞雲ファンの喝采に浴しました…が、その出来は些か切ないもので、ざっと見ただけでもエンジンとカウリングが一体、主翼と胴体の間に巨大な隙間、コックピットはバブルの弾けた都心の貸しビル状態、単排気管が一つづつ別パーツで面倒な上に形まで違う、キャノピーの幅が足りない、深さ1mmのところで全く板状にふさがれている滑油冷却器…等々、問題をたっぷり抱えていました。

 しかし、何より大事な機体のプロポーションはよく捉えていると思いますし、ある程度割り切って(←ここ大事)作れば、海軍水上偵察機の進化の最終形態が手軽に手に入る、やはり良いキットだと思います。この直後に98夜偵という更にマイナーな機体を出して以来フジミから水偵のリリースはありませんが、今の世の中で95式水偵や紫雲をインジェクション化してくれそうな大胆なメーカーはフジミくらいしかない気もしますし、是非復活して欲しい所ではあります。

 他にチェコのスペシャルホビーから出ていますが、内容については不明です。「コックピットもあるし、エンジンとカウリングも分かれている」という評は聞いたことがあるのですが。アオシマの大戦機シリーズでも出ていましたが、現在では入手困難でしょうし、仮にどこかで投売りしていても内容的に購入の価値は無いと思います。


<製 作>

 そんなわけで素組です。エンジンとカウリングが一体なのと排気管については見なかったことにしました。主翼と胴体の間の隙間は気合でパテをつめれば何とかなります。というか、簡易インジェクションに比べればこれくらいは…。コックピットにはとりあえづシートベルトのみ追加して自分を納得させましたが、

このひたすらに広大な空間に、今更それだけ付けて何になるのか

と言う気もします。切ないですね。風防に干渉する(!)巨大な帰投方位無線器も無視しました。滑油冷却器はどうして良いかわからぬままにとりあえづメッシュを貼ってみました。


<塗 粧>

 インストにある横須賀航空隊の機体です。ヨ-218だと機番が黄色でデカールの重ね貼りが面倒なので、ヨ-222にしてみました。そのうち零式水偵のKEA-222号機でも作って並べようと思っています。

 例によって日の丸とフラップの警戒線、主翼前縁の味方識別標識を塗装にして、機体下面はグンゼの明灰白色(35)をそのまま、上面もグンゼの濃緑色(15)をそのままです。下面色と上面色の間はエアブラシのフリーハンドで仕上げました。デカールを張った後でクリアとフラットベースを4対1で混ぜたものを吹いて艶を整えています。


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