Vought F4U-5N Corsair アルゼンチン海軍航空隊




<実機について>

 おフランス同様これからは空母の時代や!と喝破したアルゼンチン海軍。特にここはお隣ブラジルとの対抗意識が満々に漲っていて、かつては弩級戦艦も仲良く2隻づつ持っていたくらいですから、もう何でもいいから空母が欲しいと思い込んだのも無理からぬところでしょう。そんな悲願(というほど切実だったかはさておき)が叶ってアルゼンチン海軍が軽空母インディペンデンシアを購入したのは1950年代も半ばを過ぎる頃。イギリス海軍のコロッサス級軽空母のお古、しかもカナダ海軍からの使いまわしというのが切ないですが、まぁそれはそれ。

 となれば必要になるのは艦載機。当初アルゼンチン海軍はA-1スカイレーダーを希望しますが、A-1はアルジェリアで紛争中のフランスに優先的に回されたため(金額的に折り合わなかったという話もあり)手に入らず。そこへ

う〜ん、君らが使うんやったら、この辺がいいんちゃう?

とU.S.Navyが勧めてくれたのが朝鮮戦争も終わって用済み街道一直線のF4Uでした。

 商談はまとまり、まず1956年に12機のF4U-5を購入。時をおかずに10機のAN/APS-19レーダーを装備したF4U-5N/NLも導入されます。これが南米で初のレーダーを装備した航空機なんだとか。更に1957年5月には8機のF4U-5NLを追加購入しています。アルゼンチンでは-5N/NLを夜戦航空隊(Escuadrilla de Combate Nocturno)、-5を昼戦航空隊 (Escuadrilla de Combate Diurno) に編成し、初期の機体にはS/N 0374から0395(夜戦用が0374から0383、昼戦用が0384から0394:昼戦用はアルゼンチンに来るまでに1機が事故で失われて都合11機になってます。)が振られました。追加購入した5機にはS/N 0395と0432〜0435が振られ…

っていつの間にか減ってるし。

 1958年にはインディペンデンシアも到着し、翌年には母艦上での運用も開始されるとともに、コルセア隊は第2攻撃飛行隊 (2da Escuadrilla de Ataque) に統合され、識別記号も2-A-201〜224となります。

いつの間にか24機に減ってます

が、まぁそこはそれ…。

 機体の塗色は夜戦型はNSシーブルー。アルゼンチンに納入した時に塗りなおしているようなので、グロスシーブルーのコルセアはなかったと考えて良いのではないかと思います。一方、昼戦用の-5は上面ライトガルグレー、下面インシグニアホワイトのUSN標準塗装。排気管後方は(恐らく排気汚れを目立たなくするためにMiddle Gray塗装とされていますが、現存するカラー写真ではかなり青みがかって見えるものが多く、夜戦用のNSシーブルーの可能性もあると個人的には思っています。いやほら、夜戦型と塗料を共用するようなこともあったかも知れませんし(←想像)。因みに-5の癖に夜戦塗装になっている0393/3-A-212(←これ、FCM社のデカールセットに入ってます。)や、逆に-5Nなのに昼戦用になっている0435/3-A-213のような例外もあります。カウリングの文字は1960年まではMARINA DE GUERRA、その後1964年初めまではARMADA NACIONAL、それ以降はARMADAとなるんだとか。

 1964年以降、残った機体は第3飛行隊に移され、識別記号も3-A-2xxとなります。1966年1月にコルセア隊は正式に活動を停止しますが、実質その前年辺りから殆ど飛行していなかったとか。尤も3-A-2xxを付けたコルセアがインディペンデンシアの飛行甲板に居座っている写真もそれなりにありますから、なんだかんだで頑張ってもいたのでしょう。1965年の時点で残っている機体は10機強であったそうです。

Vought F4U-5N Corsair
寸法諸元11.23×9.96×3.71m(W×L×H) 全備重量4,663kg
主機Rolls Roys Griffon 85(2,055HP) 最大速度721km/h
初飛行 最大航続距離
武装AM-M3 20mm機銃×4


<キットについて>

 アクの強い外観やらのお陰で母艦航空隊の主力ヘルキャットを軽く凌ぐ人気のF4U。しかし巷に流通しているキットは大戦中に活躍したF4U-1あたりが主力で、簡易じゃないインジェクションの戦後型となると何気にレベルのF4U-5が頼みの綱となります。イタレリのF4U-4Bは最近見ないし、そもそも基本的には同じものだし。

 で、そのレベルのキットなんですが、元はF4U-5Nとして発売されていたとかで、確かに右翼レーダーポッドや-5N用のアンテナなどのパーツも付いています。出来はそれなりではあるものの全体にモールドがだるいのが欠点か。特に動翼周りのモールドがまったりと広いのは辛いところです。バリエーション展開にまったく興味を示さない某T社は兎も角、某H社辺りが1/72でも1/48と同じくくらいのバリエーション展開をしてくれると有難いんですが…そうですか、営業的に辛いですか。


<製 作>

 コックピットに新宿YSの閉店前特売で手に入れた、AIRESのF4U-7用レジンパーツを使用。レベルのキットにも問題なく組み込めます。その他は思いっきり素組。ただハズレを引いたのか機体のパーツ変形が半端でなく、強引に合わせたもののえらい苦労を強いられました。その他の合いは全般に良好だったんですが、主翼と胴体の間には思いっきりな隙間が空きます。

頑張りましょう。

 最初は普通のグロスシーブルー単色スキームにするつもりで、FCMのそれ用デカールなんか買い込んであったんですが、資料を漁っていて見つけた昼間用のガルグレー/ホワイトスキームに一目惚れして乗り換え。お陰でデカールは悉く自作する羽目になりました。複雑極まりない胴体の国籍標識も自作。実物より一回り大きくなってしまったのはともかく(ともかく?)やはりプリンタの都合で網目が出てしまうのが辛いところです。

 塗装は米海軍標準の、クレオスのグレーFS16440(316)とホワイトFS17875(315)。排気管後方の塗装は上記のような理由(というか個人的思い込み)からシーブルーにしてみました。フィンフラッシュの色はクレオスのスカイブルー(34)とライトブルー(20)を適当に混ぜ合わせています。これもカラー写真で見ると結構鮮やかな色で、例えばアルゼンチン代表のユニフォームなんかと比べるとかなり彩度が違うように見えます。

 マーキングは実機の写真を参考にしているんであまり大きな間違いは無いと思いますが、上記の解説を信じると(いや、自分で書いておいてなんですが)、識別記号3-A-2xxをつけて、カウリングの文字が"ARMADA NACIONAL"というのは1964年初頭の短期間だけということになり、ちょっと心配。F4U-5Nというのも写真のキャプションだけによっているんで、上記の解説と合わせると自信なし。どの途主翼のAN/APS-19レーダーは付いてないようなんで、この個体については購入時から付いてなくてアルゼンチンでは最初から-5扱いだったんじゃないかと思っています。アルゼンチンでのS/Nが判るとこの辺りもう少しはっきりするんですが…。


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