Heinkel He111H-3 ルーマニア王国空軍

1/72 ハセガワ




<実機について>

 スペイン内戦でその威力をみせつけ、すっかりルフトヴァッフェの主力爆撃機になりおおせたHe111。ただまぁ元来爆撃機にしてはやたら空力に気を使っていたり、翼面積がやたらと広かったり、胴体が図太かったりと、

最初は割と本気で高速輸送機を作ろうとしていたんじゃなかろうか

とかいう感もなくはない機体ですから、年を経るに従って色々な改修が施されていきます。F型からは独特の楕円翼が生産性の高い直線テーパー翼になり、P型からは段差のない独特の機首形状を導入。エンジンはDBとユモを行ったり来たりした挙句にH型ではJumo 211を装備することになります。結局このH型が爆撃隊の主力として緒戦を戦い抜き、Battle of Britainで限界を露呈したりするわけなんですが、まぁそれはそれ。

 さて、Squadron/Signalの“Rumanian Air Force, the prime decade 1938-1947”では「1937年のARR爆撃隊は、近代空軍の爆撃隊というよりは旧式機の巨大な博物館であった。」とバカにされているARR爆撃隊ですが、その後局面を打開しようとしてフランスからBloch200とかPotez543とかを買い込んで更に博物館っぷりを増大させてしまいます。これを一気に入れ替えるために導入された第一弾がサヴォイアSM79のノーム・ローヌ換装版であり、第二弾として導入されたのがこのHe111Hでした。

 1940年に32機のHe111H-3が供与され、ARRのシリアル1〜32(まんまですな。)が与えられます。全機が第5爆撃航空群の3個中隊に配属されて開戦を迎え、ソヴィエト前線後方の飛行場や補給基地などの爆撃に活躍します。1942年にはてこ入れとして更に15機のH-6が供与され、シリアル47〜60が与えられます。此方はH-6だけで第78海上爆撃中隊を構成し、一応第5爆撃航空群には属したものの、主として黒海における水上船舶の攻撃に用いられた模様です。独立中隊として沿岸航空部隊を集めたドブルジャ航空軍団のほうに属していたとする記述もあり、まぁ時期によってはそうだったんでしょう。

 損害などもあって残りの2個中隊に集約されたHe111H-3は1942年のスターリングラード戦役に参加して市街の空襲などに参画しますが、対空砲火や次第に数を増す赤軍戦闘機などにより損失を重ね、最後には前線の可動機が1機にまで落ち込みます。1943年以降は新たに供与されたJu88Aが双発爆撃機の主力を務めるようになり、He111はH-6からなる78海上爆撃中隊のみが活動している模様。残ったH-3もこちらに統合されたか、輸送機や練習機に用いられていたんではないかと思われます。

というか、残ってなかったのかも。

H-6については1944年8月時点で少なくとも約半数の7機が残存していたそうで、ラウンデルをつけた写真も残っています。うち3機は同年末にも現役であったとか。

Heinkel He111H-3
寸法諸元22.6×16.4×4.0m(W×L×H) 全備重量14,000kg
主機 Junkers Jumo 211D-1 (公称1,100HP) 最大速度440km/h (6,000m)
初飛行1935年(試作一号機) 最大航続距離1,950km
武装MG15(7.92mm)機銃×4、爆装2,500kg


<キットについて>

 テーパー翼になった後期型He111については長らくイタレリのキットが有名でしたが、今回は2004年にハセガワから発売になった最新のキットを使用。後期型の主要タイプであるP型、H型の両方について、幾つかのサブタイプがキット化されています。

 ハセガワらしい端正なキットで筋彫りがうるさいというほかは特に不満の声も聞かれません。組み易さなどもさることながら、機首周りの形状などもイタレリより良いという話もあり、お奨めのキットです。できれば楕円翼の初期型にも展開して欲しかったのですが…。


<製 作>

 とにかく機首があんななので中が丸見えなのは必至。エデュアルドから出ているH-6用の内装用エッチングパーツを使って色々と細かくやっています。実は出来て見ると個々の窓が小さかったりすることもあって、それほど内部は気にならなかったりもするんですが…。あとはピトー管の金属化くらい。ARRがどんな爆装を用いていたのかはよく分かりませんが、折角特徴的なハーモニカ型爆弾槽が再現されているので、外装は無しにしてみました。

 また、写真で見る限りARRのHe111Hにはゴンドラ前面の窓及び機銃はなかったようなので閉鎖。後方胴体窓から機銃を出している写真もなかったのでとりあえづ穴のないものを使用。前方胴体窓も写真で見ると潰されていなかったようです。

 問題は塗装。とにかくそんなに沢山ある筈もない資料が見事に異なる見解を示していてもうどうしたもんだか状態。(詳細は別項に纏めましたんで、お暇な方はご笑覧ください。)結局、上面の塗装は明るいほうからグレイがRLM60(60)+ホワイト(1)若干量、グリーンがRLM80(120)のビン生、マルーンが赤褐色(131)+RLM66(116)を半々くらいとなっております。迷彩パターンも極力写真から読み取ろうとした結果ではあるんですが、多分に妄想の産物かも。

 デカールは基本的にAvi Printの“Heinkel He 111 Pt 2 Foreign Service”から持ってきました…が、主翼の国籍標識は間違っていたので仕方なく自作。前にも書いたようにアルプスプリンタで作ると中間色の網目が問題になるので、今回は青井さんから教わったタトゥーシールを使ってみました。下字の白はアルプスプリンタで自作して、カラーの部分のみタトゥーシールを重ねています。貼る時の位置あわせに散々苦労したものの、出来てみると思い通りの中間色が使えるのはやはり魅力。エーワンのタトゥーシールは若干表面に網目状の模様が出ますが、(機体が大きくて自然と視点が離れることもあって)それほど気にはならない程度。しかし当の青井さんにお見せしたところ、

これはエーワンの奴を使いましたね。

といきなり見抜かれて愕然。何でもご自分で初めて使われた時に各社のものを実際に使ってどれが良いか確かめられたんだとか。いやはや…。


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