Potez 63.11 ルーマニア王国空軍

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<実機について>

 何にでも使えるのが売りのPotez63。当然、戦闘機型や爆撃機型の開発と並行して偵察機型も開発されることになります。まず開発されたのが機体下面に大きな偵察員ゴンドラをつけた637A3ですが、これはあくまでつなぎであったようで、本命としては機首の形状を大改修してグラスノーズにより視界を確保した63.11が開発されます。ちょうどBlenheim IVとかIlyushin Il-4とか世界的にもグラスノーズが流行り始めていた頃ですから、まぁそれに乗っかった面もあるんでしょう。

 この頃のフランス空軍偵察隊は機材の更新が遅れていて(というかまぁ空軍全体がそうなんじゃないかという話もあるんですがPotez 39とか、下手すりゃPotez 25とかBreguet 27とかが悠々と飛んでいる世界でしたから、新開発のPotez63.11の人気は急騰(まぁ新型機っぽい飛行機であればなんでも急騰したんじゃないかという気はしますが…)。39年に1,684機、更には40年5月までに860機を生産する大計画が策定されます。

 しかしまぁ計画通りには行かないのが世の常。実際には、40年3月までに部隊に届いたのは459機。更に悪いことにはスペアパーツの不足なんかが祟って、西方電撃戦の開始時には7割近くが稼動状態にないまま地上撃破されてしまったんだとか。それでも残った機体は奮闘を続けますが、護衛のない単独行が多かったこともあってフランス機中最も大きな損害(いや、どういう基準で言ってるのかはよく判らないんですが、ものの本にはそう書いてあります。)を出しています。飛行性の良さや構造の丈夫さを生かして生還することも多々あったのことで、要するに飛行機自身の問題というよりは、戦局そのものが左前だったことに尽きるんでしょうが…。

 ドイツ人も奮闘ぶりを高く評価したのかはたまた単に途中まで作ってあるのが勿体無いと思ったのか、ドイツ占領下でも120機ほどが製造され、主に訓練用などに用いられています。ルーマニアへは例によって石油とのバーターで1942年の春に少なくとも12機が供与されています。配属先は軽爆撃隊ということになっていますが、実際には後方のブラショフ辺りで爆撃訓練に使われたんだとか。

Potez 63.11
寸法諸元16.00×10.5×3.08m(W×L×H) 全備重量4,495kg
主機 Gnome Rone 14M4/5 (離昇700HP) 最大速度428km/h (alt. 5,500m)
初飛行1938.12.31 最大航続距離1,500km
武装7.5mm MAC機銃×3、爆装200kg


<キットについて>

 Potez63、631に続いて発売されたキットですが、パーツ割を見るに63、631との共用部分はなく全て新規金型のよう。胴体以外は共通部分も多いはずなんですが、まぁ命数の短い簡易金型だし、それなりに数もでそうだしということで作り直したんでしょう。尤も個々のパーツの形状は殆ど変わっていないので、CADデータなんかはふんだんに使いまわしているのだと思います。また、機首に大きな透明部があることもあって、631ではバキュームだったクリアパーツもこのキットではインジェクションのものが入っています。

 デカールは箱絵のフランス空軍の他、イギリス空軍、ルーマニア空軍がそれぞれ一例づつ付いてきます。ルーマニアの国籍標識にちょっとずれがあったりするのが残念ではありますが…。


<製 作>

 基本的な組立はPotez633と殆ど同様。コックピットの内装なんかはなぜか此方のほうが充実していたりして、手が掛からなくなっています。追加したのは側壁の桁とシートベルト程度。イモ付けの主翼の取付や、機体下面との面出しに苦労するのも同様です。あとこのキット固有の問題としては機首のクリアパーツ周りのの合わせが今一つなことで、塗装前に接着してかなり隙間にパテを詰めたり削ったりしています。

 プロペラは3肢と2肢が両方セットされていますが、おなじみSquadoron/Signalの“Rumanian Air Force, the prime decade 1938-1947”によるとルーマニアで使われた機体は2肢プロペラのほうが多かったとのことなので、2肢にしてみました。宮脇さんによると、フランスではこの2肢プロペラは実戦用ではなく工場からの出荷用で、前線後方のデポで正規の3肢プロペラに交換していたんだとか。

 同じルーマニア機でも63.11は戦中に供給されている関係でフランス空軍の3色迷彩のまま、国籍標識だけを変更して使われています。写真を見る限りフランスの国籍標識を塗り潰したような跡は見られない(といっても相当に不鮮明な写真ばかりではありますが)ので、フランス国内でフレンチ迷彩用の塗料で塗り潰していたのでしょう。上記のように2肢プロペラが工場出荷用だとすると、2肢プロペラの機体は前線部隊で鹵獲されたよりは工場にあった機体の可能性が大で、フランスの国籍標識も描かれてなかったのかも知れません。

 フランスの3色迷彩は最初H社のMS.406辺りの塗装指示を参考にするつもりだったんですが、イメージに合わないので結局適当に調合。

Light Blue Gray:グレーFS36375(C308)
Blue Gray:ブルーグレーFS35189(C367)4:ニュートラルグレイ(C13)2:ホワイト(C01)1
Green:フィールドグリーンFS34097(C340)+RLM80(C120)小量
Brown:赤褐色(C131)2:艦底色(C29)1

 単色でみると大体自分のイメージ通りではあったんですが、いざ塗ってみると妙にバランスが悪くてちょっとしょんぼり。静岡HSの合同展示会の折に他の作品も見て回ったところ、一番上面のグレイをここまで青側に振った例はなかったので、まぁその辺りが違和感の原因かもしれません。


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