Hawker/Ikarus Hurricane Mk.I (early) ユーゴスラビア王国空軍

1/72 AZ models


<実機について>

 戦闘機隊の若返りを図るユーゴスラビア空軍がハリケーンに目をつけたのは1938年のこと。その年の終わりから翌39年の4月にかけて最初の12機が納品されています。何れも第一ロットからの機体で、羽布張り主翼にエンジンはMarlin II、プロペラもワッツ固定ピッチ2肢のものです。1940年には第二陣として第二ロットからの12機が到着。こちらは流石に金属翼でエンジンもMarlin III、でもプロペラは最新のロートル定速ではなくデ・ハヴィランド2段可変3肢であったとか。第一ロットにはBR.2301〜2312、第二ロットにはBR.2313〜BR.2324のシリアルが与えられます。

 一方でライセンス生産の交渉も進み、40年には契約成立。早速国内のZmaj工場とRogozarski工場に計100機の発注が出されます。しかし英国からのマーリンエンジンの供給(つまり、エンジン本体は購入してたんですな。)が滞ったりした関係で41年4月のドイツ侵攻までにZmaj工場では24機(厳密には4/6までに18機が前線部隊に配属されており、紛争中に6機が追加で配属されたんだとか。)が生産されシリアルBR.2325〜BR.2348が与えられます。此方は主機にMarlin IIIエンジンとデ・ハヴィランド2段可変3肢プロペラの組み合わせ。しかし主翼は第一ロットと同様羽布張りであったとか。

 41年4月6日のドイツ侵攻時にはオーストリア国境方面に3個飛行隊、べオグラード周辺に2個飛行隊の併せて35機が稼動状態にありました。ハリケーン隊は迎撃や爆撃隊の護衛に奮闘したほか、特にベオグラード方面の部隊は敵地上部隊への銃撃に従事し、甚大な損害を与えた…ということになっていたりします。結局停戦までに6機の撃墜確実、1機の不確実と引き換えに5機が空中戦で失われ、また事故等で5機が失われたとか。特に4/9にはベオグラードに敵地上部隊が接近中との誤報が流れ、濃霧をついて離陸した4機が事故で失われています。その他の機体は地上で破壊されたり、占領時に友軍の手で破壊されたりしていますが、一部はドイツやイタリアに鹵獲されたりしています。ドイツに鹵獲された機体の一部はハリケーンユーザーであるルーマニアに売り飛ばされて(恐らくは)部品取りに。イタリアに行った機体の1機はイタリア塗装に改められて、ムッソリーニの視察を受けたり映画に出演にしたりと活躍?しています。


<製 作>

 ただでさえあまり出来が良いとはいえない簡易インジェクションのキット。とにかくバリを取ったり端面の直角を出したり翼後縁を削りこんだりするだけで相当に手数はかかりますが、その辺りをきちんとやればそれなりに何とかなる感じはあります。最大の難関は脚納庫で、翼下面の開口部よりも脚納庫が広くなっているため、翼下面パーツの厚さがそのまま外板の厚さとして現れてしまいます。実際の外板の厚さとまではいかないものの、ここはリューターを駆使して薄く削いでやると大分良い感じに。というか、どの途これをやらないと脚納庫のパーツが分厚すぎて翼内に収まりません。

 プロペラも差込機構など一切ない全くのイモ付けなので、真鍮線と真鍮パイプの組み合わせで回転するようにしてやります。着陸灯もないので切り欠いてクリア化。幸いハセガワのジャンクがあったので、このクリアパーツをまんま流用しています。他にもプロペラブレード、主脚周り、尾輪等々ハセガワから奪ってきた小物は数知れず。あと、唯一SWORD版から進化した点であるインジェクションの風防は全く胴体に合わず、かなり胴体側を削ってやる必要があります。何故かハセガワ1/72の風防パーツと全く同じ大きさで、どうも胴体との勘合など考えずにこれをコピーしたんじゃないかという疑惑も…。

 塗装については、輸入した機体はRAFのDark Earth / Dark Green標準迷彩(機体によってはもう一色明色を塗り足した三色迷彩)に両側主翼上下面に国籍標識、フィンフラッシュなしというのが基本パターンのよう。時期によるのか、胴体側面に大きめのローマ数字で機番を入れた機体もあります。一方Zmajでライセンス生産された機体はLight Earth / Dark Earth / Dark Greenと思しき(後述)三色迷彩で、胴体の塗り分け線が主翼後縁から水平安定板前縁にかけてせり上がっている点も輸入機とは異なります。また、主翼の国籍標識は片側だけになり、尾翼には細い帯状のフィンフラッシュが入るようになります。何れの機体もプロペラ/スピナーは黒でプロペラ先端に黄色の注意塗装が入ります。

 今回はZmaj製の機体として、塗りわけパターンなどはLift Here! Decalsの“JKRV III”に収録されているBR.2347のものに従ってみました。問題は何色を塗るかで、実はLift Here! Decalsのインストでは上面の3色をそれぞれDark Earth(FS30219) / Dark Green(FS34079) / Brown(FS10000) としています。つまり一番明るい黄土色っぽいところがダークアースなわけで、これでは流石に一般的なイメージと差がありすぎるし、そもそも暗すぎるかと…。実際、インストに付いているカラー塗装図で見る限りは暗いほうのブラウンが殆どダークアースで、明るいほうの黄土色は殆どミドルストーンに近い感じです。結局カラー図に近づけることを目安に調色し、

Earth Brown:ミドルストーン(C21)70%+ホワイト(C1)30%+隠し味
Green:ダークグリーン(C3xx0)+RLM82ライトグリーン(C122)少々
Dark Brown:ダークアース(C22)70%+ニュートラルグレイ(C13)30%

ということにしてみました。一般的な感覚(←そもそも一般人はユーゴスラビア王国空軍の塗装イメージなんて持っていないという話はさておき…。)にはこちらのほうが近いんではないかと思うんですが…。あ、因みに下面もLight GrayとかPale Blueとか色々な説が乱れ飛んでいるんですが、こちらはまぁ好みでRLM65(C115)+ライトブルー(C20)としています。割合は適当。

 デカールはキットのものの形状がちょっとおかしかったため、国籍標識はSWORDのキットについてきたものを使用。シリアル等はLift Here! Decalsの“JKRV III”です。片翼のみに国籍標識をつける場合は左上と右下というのが一般的ですが、40年にZmajで撮影されたBR.2347の右側面写真では右翼下面に国籍標識がないことが確認できます。Lift Here! decalのインストは左上と左下に国籍標識があった説で本作もこれに従っていますが、下面には国籍標識を記入していなかった可能性も否定できません。

 そんなこんなで色々と考証に粗はあるものの、羽布張り主翼に三色迷彩の姿はよく見るRAFのハリケーンとはかなり異なる味わいがあります。相当に苦労はしたものの、まぁそれだけのことはあったんではないかと。



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