North American P-51B スイス空軍機
1/72 ハセガワ
<実機について>
ドイツとの後ろ暗い関係を取り沙汰されたり米軍に誤爆されたりと色々と苦労しながらも何とか中立を維持したスイス。そんな中、領内に不時着したP-51Bを鹵獲したりしていたのがスイス空軍とマスタングの最初の出会いになります。
当時の主力はドイツから貰ったBf109なんかだったりするわけですが、戦争が終わってBf109どころかドイツ航空産業そのものがうたかたの露と消えてしまうと、スイス空軍ははたと困ります。とりもなおさず英国からヴァンパイアのライセンスを取り付けることにしたスイスですが、生産の立ち上げやらなんやらで本格的な導入まではそれなりに時間が掛かる様子。中立維持のための(それなりに)強力な軍備の必要性はまさに身に沁みたばかりのところですし、ならば旧式化する一方で部品も手に入らないBf109を共食いしながら維持するなどというのは論外でしょう。尤も
スペイン空軍はやってたりしますが…。
でつなぎとして選ばれたのが、鹵獲して運用してみた実績もあり、ご近所で大量にだぶついてもいるP-51。早速100機+追加で30機を一機$4,000で購入する契約がまとまります。最初の100機は米軍の搭乗員がわざわざ空輸してくれたんですが、折からのベルリン危機のために米軍はそれどころではなくなってしまいます。仕方なく、スイス空軍は初期の機体でP-51に慣熟してきた搭乗員やら技術者やらを南ドイツの米軍基地に自前の輸送機(これがまたJu52だったりするんですが)で送り込み、そこで共食い整備までやって30機の可動機を揃えてフェリーして帰ってきたんだとか。何と言うか
新鋭機の調達だか廃品回収業だか良く分からない
ことになっている感があります。
2、3年の繋ぎの予定で購入したP-51ですが、思ったよりも使い勝手が良かったり、ヴァンパイアのライセンス生産が予想外に遅れたりとかでずるずると使われ続け、結局1958年まで使用されてたと言います。まぁ、スイスを挟んで独仏が対立した時代に比べれば、世界の対立軸が米ソに移ったことで、スイスの空の緊張も些かなりとも和らいでいたというようなこともあったのかもしれません。
で、作例はその1948年に購入した分ではなくて、1944年に不時着して鹵獲された機体。まぁこれがなければ後続の購入もなかったと思えばスイスのP-51を語る上で欠かせない機体ではあります。派手な塗装は軍用機らしい精悍さもないし、さりとて特にセンスが良いわけでもないですが、時期が時期だけにとにかく何が何でも交戦国の機体と誤認されるわけにはいかないという中立国のならではの必死さの表れと思えばまた別種の趣があるかとも思います。
<製 作>
キット評にも書いたんですが、ハセガワのP-51シリーズは機首の形状が些か微妙で、実機の写真と比べると一回り太い上に上面もやや扁平な形状になっています。まぁ微妙といえば微妙ですし、ありえない位に浅い脚納庫などと考えあわせると
同じマーリンだから、スピットファイアと一緒でいいや
みたいなやっつけ仕事をやらかした可能性もなくはないんですが、一方でいかにも正立Vのエンジンを収めている力強さもあって、個人的にはむしろ此方のほうが気に入っていたりするわけです。
キットのデカールがいけないわけでもないんですが、そもそも大判デカールを貼るのが嫌だということでマーキングは殆ど塗装。赤は原色を使うと流石にコントラストが強すぎるんで、例によってクレオスのモンツァレッドを艶を落として使っています。まぁ塗装が塗装ですから若干おもちゃっぽくなるのは如何ともし難いところではあるんですが…。
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